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フランス語のお勉強

原発問題は現在進行形なので不明の部分も多いのだけれど
仏文の先生で長年「ル・モンド」を鬼のように読んでいる人、というか学生に読ませている人がいて
「ル・モンド」からの紹介をひろうと次のようなものがある。

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Samedi 26 mars 2011
福島原発 「東電の罪」と「原子力ロビー」(仏ル・モンド紙報道)
3月26日 23時45分(日本時間27日7時45分)

 仏日刊紙ル・モンドは26、27日版紙面で福島原発の状況と東京電力に関する特集記事を掲載している。「日本人は原子力災害を意識し始めているものの、未だ事故の重大性には気づいていないようだ」と冒頭で同紙の東京特派員は語る。特派員によれば、「新聞、民放テレビ局、インターネットのブログなどで語られる原子力専門家の話を聞いていると、この一連の悲劇の背景に「原子力業界のロビー活動」が見え隠れしている」という。

日本の「原子力ロビー」

 この「原子力ロビー」には原子力事業を総括する経済産業省と同省の管轄である原子力安全・保安院、電力各社、電気事業連合会(電事連)、そして発電所を建設する東芝や日立といった産業界の大企業が関与し、「非常に大きな資産と影響力」を誇っているという。また、原子力関連の官庁からの天下り社員が送られることにより、完全な「情報統制」を行うだけでなく、出版やテレビ局を通じて大規模な広告キャンペーンを繰り広げ「原子力は100%安全である」という神話を築いて来た。さらに、現在の与党民主党は原子力エネルギー業界出身の組合員が多い労働組合「連合」を支持層にしているため、2009年の政権交代後もこの状況に変化はなかった。同紙は、「この行政、監督官庁、原発建設企業そして電力会社間の緊密な関係が原発反対派を黙殺し、さらに原子力に関するあらゆる疑問を回避してきた」と指摘。電力各社は「1970年代以降から度重なる原発事象を隠蔽、改ざんし続けて来た。当時最も批判が集中したのは東京電力である」と付け加える。

安全よりもコスト削減

 ル・モンド紙は未確認の情報とした上で、「電力各社は長期的な原発の安全性よりも短期の利益勘定を優先し、世界で最も地震と津波が多い日本国土の危険性を考慮していない」という東電元社員の証言を紹介。福島原発は1956年に発生したチリ地震をモデルにして5,5メートルまでの波にしか耐えられるように設計されていなかったたため、地震発生時原子炉は自動停止したものの、冷却システムは津波の影響で完全に機能を失ってしまった。東京新聞では福島原発の建設に関わった当時の東芝の技師が「設計時の耐震基準が低すぎた」と告白している。

 経済産業省は「この危機が落ち着いた段階で東京電力の処遇を決める」としているが、「それまでの間、一体何人の被害者が出るのだろうか?」と同紙は問う。

 「日本が直面しているのは自然災害ではなく、人的災害である」という東芝元社員の証言、「福島原発は異常事象と作業員の被曝が日本で最も多い発電所」という共産党吉井英勝議員の告発、さらに原発保全作業は下請会社の経験乏しい作業員が行い、今現在大災害の現場で戦っているのもその作業員達である事実も判明している。事故後の対応の遅さに加え、地震と津波が発生してから2日間、周辺住民への被害よりも設備の保全を優先させていた経緯も厳しい批判を受けて当然だ。実際、地震の際に福島原発に派遣されていたフランス原子力企業アレバ社の8名は危険性をすぐに察知して真っ先に退避している。

過信した大企業 東京電力

 今日3月26日は東京電力が福島原発1号機の操業を開始して丁度40周年を迎える。
原子力エネルギーに着手して40年目の今日、東京電力は重大な原子力災害を引き起こす直前の状態にまで追いつめられている。さらに、事故後の対応が批判に晒されているにも拘らず、ガス価格の値上げを理由に4月の電気料金を値上げすることを発表。事故発生から29時間後に行われた記者会見以降公式の場に姿を現さない清水正孝社長にも批判が集中している。
 東京電力は従業員3万8千人と(2009年度)売上げ5兆円と1337億円の純利益を誇る世界4位の大電力企業である。
「原子力安全・保安院と経産省を始めとする原子力推進ロビーに支えられ「奢り高ぶった」企業の体質が、原発内の事象や技術報告の隠蔽を生み出した温床ではないか」と同紙は問う。
 しかし今回の事故により東電グループは解体の危機にあり、同社の原子力計画も中止を余儀なくされるだろう。ましては2012年に予定されていた新規原子炉2機の工事着工などは夢の話だ。

参考記事
"Silences coupables", Le Monde, 26-27/03/2011
"La compagnie d'électricité Tepco, arrogante et dissimulatrice", Le Monde, 26-27/03/2011

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Samedi 26 mars 2011
福島、非難すべき沈黙
*ル・モンド紙 3月26日13時59分(日本時間21時59分):
 
十分な情報を得られず、深刻さを推し量ることができない状態で、事故の危険を段々意識するようなった多くの日本人は、新聞雑誌の記事や民放テレビで放送される原子力専門家の証言を通じて、以前より不安を抱くようになっている。この惨事の吐き気を催させるような背景が今浮かび上がってきたのである。「原子力ロビー」と呼ぶ権力が。
財力と権力の心臓部は原子力の政治を牛耳っている経済産業省で鼓動している。その下部組織が電力会社連合、原子力安全・保安院、原発の建設産業グループである東芝と日立、そして原発の事業社である。
電力会社に天下りした原子力関連機関と官公庁の官僚を擁するこのロビーは情報を塞ぐことに手腕を発揮する。原子力は完璧に安全であるということを保証する為に新聞雑誌やテレビの大々的なキャンペーン広告に出資する。
2009年の新しい与党の登場もこの構図を変えることはなかった。日本民主党は「連合」の勢力を基盤にしており、その中心は原子力に非常に結びついたエネルギー・セクターの労働者をまとめる部門なのである。
省庁、監視機関、原発建設会社と事業社の間での大規模なこの共謀行為は、反対派の口を塞ぐだけでなく原子力に関するすべての疑問を撤去する。資料で立証された証拠が足りないわけではなく、怠慢と省略による欺瞞、あるいは純粋なる改竄によって撤去するのである。この手口は、日本に原子力が導入された1970年代からの事故隠蔽に対して電力会社10社が問題視されたことから2002年に公になった。福島原発を所有しその事業社でもある東京電力は最もやり玉に挙げられた会社である。
今回、東京電力の元社員の証言が加わる。しかし今のところ、この暴露は背筋を寒くさせる。もしそれが事実を反映したものであれば、東京電力そして同業会社が長期的な安全の絶対的必要より目先の利益を優先させ、地震が多く津波もある国での危険を十分には考慮していなかったように見える。
福島原発は、1956年のチリ地震で発生した津波を参考にして5,5メートルの波に耐えるよう考案されたものである。原子炉は地震に耐え、自動的に停止した。しかし、十分防御されていなかった冷却装置が動かなくなってしまった。福島原発の設計に参加した東芝の2人のエンジニアは、東京新聞によると、「低すぎる危険」が計算の基本として採用されたと考えている。
心ならずも、経済長官は「危機状態を脱したら、東京電力の管理状況を調査しなければならない」と認めた。もちろんだ。しかしその間に一体何人の犠牲者を数えなければならないのだろう?
地震が起きた時に福島原発にいた原子力の世界でリーダー格のフランス企業アレヴァの8人の社員はすぐに危険を察知し、一番に現場を離れた。アレヴァは一度もクライアントである東京電力の原発が危険をかかえているとの懸念を発したことはなかったが。

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Mardi 29 mars 2011
佐藤栄佐久前福島県知事インタビュー(仏ル・モンド紙)
3月29日付 Le Monde
 
 仏ル・モンド紙は29日付紙面で、1988年から2006年まで福島県知事(当選5回)を務めた佐藤栄佐久氏のインタビューを掲載している。元外交官で衆議院議員でもあった佐藤氏は任期中に小泉純一郎元首相の改革政策に反対し、東京電力福島原発に闘いを挑んだことでも有名である。

 インタビューの中で佐藤前知事は、「2002年、福島第一原発の原子炉2機で炉心を包む部分に損害があるとした検査報告を東京電力が改ざんしたことを認める原子力安全・保安院の書類を受け取った。東電と原子炉の機能を監視することが目的の保安院が、その事実を2年間も秘密にしていたことは受け入れがたいことだった」と語る。この不祥事により福島原発では第1号機が運転停止され、その翌年には東電管内16の原子炉が検査のため停止された。前知事は、「今回の危機が発生するまで改ざん問題が頭から離れなかっだが、恐れていたことが現実となった。」と語る。さらに前知事は任期中の2000年以降、東京電力の下請け会社社員から「原発の安全基準が守られていない」という内容の内部告発を20通以上も受け取っていた。下請け会社の社員達は労働条件の悪さを理由に自らの安全に不安を感じてお り、原発内の検査作業も指針が決める2倍のスピードでこなさなければならなかったという。前知事は「(告発した人の)氏名を伏せて保安院に手紙の内容を伝えたが、2006年に知事の任期を終えるまで返答はなかった」と証言する。
 また佐藤前知事は、同紙の「今回の原子力危機は東電の責任か?」という質問に対し、「今回の大災害は人間の不注意過信によって引き起こされたもの。経済産業省から独立した監視機関を設置することが数年前から叫ばれているが、現時点では監督官庁は原発建設を推進するための行政機関でしかなく、(原発に対して)監視の目を光らせることができない。日本は民主主義国家と言われているが、それはある程度までで、多くの決定が不明瞭な利益算段のために行われ、また多くの分野が汚職によって生まれている」と語った。
 
インタビュー:Philippe Pons Le Monde 東京特派員
"La catastrophe actuelle a été provoquée par l'imprudence des hommes", Le Monde, 29/03/2011
(仏語記事からの和訳抜粋)

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